教育資金を1,500万円まで非課税で子や孫に贈れる「教育資金の一括贈与非課税枠」が、2026年3月で終了する方向で検討されています。
祖父母や親が、子ども・孫の将来の学費を一気に準備できる『教育資金の一括贈与非課税枠』。
便利な一方で、「一部の富裕層に偏っている」「格差を固定化する」といった批判を受けた形です。

教育資金贈与の非課税特例とは

「教育資金贈与の非課税措置」は、平成25年度税制改正で創設され、親や祖父母が子・孫の教育費を一括で贈与する際に、1人当たり最大1,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。
具体的には、祖父母ら贈与者が子・孫名義の金融機関口座に学費や教材費など教育関連費用を一括で預け入れ、受贈者(子・孫)が30歳未満(かつ前年所得が1,000万円以下)であれば、1,500万円までが贈与税の課税対象外となります。
なお、学習塾や習い事など学校以外への支払い分は上限500万円です。
必要な手続きとしては、金融機関を通じて「教育資金非課税申告書」を提出し、領収書で支出を証明する仕組みです。
制度開始から令和8年(2026年)3月末までの時限措置とされており、利用者は教育資金管理契約の下で贈与を行う点に特徴があります。
廃止決定の背景と影響
これまでも適用期限の延長を繰り返してきましたが、近年の利用低迷と経済格差固定化への懸念が廃止検討の主な理由です。
実際、手続きの煩雑さもあって利用者数は減少傾向にあり、2024年度の契約件数は約6800件にとどまっています。
一方で、高所得者層(資産家)の利用割合が高く、「富裕層のみが恩恵を受け、社会的格差を助長する」との指摘もありました。
さらに、幼児教育・高校授業料の無償化が進み、教育費負担そのものが軽減されたことも背景の一つです。
廃止により、この特例を利用した学費の一括贈与はできなくなります(既存契約は制度満了まで利用可)。将来の教育資金準備にあたり、贈与税負担の有無や手続きの違いを押さえておく必要があります。
対象者・適齢年齢と活用ポイント
この特例の利用対象者は、贈与者が直系尊属(親・祖父母など)、受贈者が子や孫です。受贈者は契約締結日時点で30歳未満である必要があります。
ただし、契約後に受贈者が30歳を超えても、引き続き在学中であれば最長40歳まで教育資金として口座を使えます。
したがって、子育て世代(30~40代の親)やその親世代(60代前後の祖父母)など、教育費負担が見込まれる世代が主な対象となります。
適齢年齢の観点では、たとえば子供が生まれたばかりの親(30歳前後)や、入学前の幼児を持つ親・祖父母にとって、早めの準備が効果的です。
制度が廃止される前に利用を検討するなら、令和8年3月までに契約手続を済ませ、教育費の必要時に合わせて引き出す計画が必要です。
制度終了後はこの大口非課税枠は使えなくなるため、活用の検討は早めに行いましょう。
廃止後どうする?
代替策・実践的アドバイス
制度廃止後は、次のような他の教育資金準備方法を検討できます。
必要な時に必要額を都度支払う
親や祖父母が子どもの学費・生活費を「必要な時に必要な分だけ」直接支払う場合、それは扶養義務者による教育・生活費とみなされて非課税です。
例えば入学時に学費を銀行振込で支払ったり、教育費の領収書を残すなどすれば贈与税は課税されません。
ただし、使途不明な蓄財は課税対象となるので、あくまで「教育目的で都度支出する」ことが条件です。
この方法は手続きが不要で確実ですが、将来まとめて大きな額を贈与する場合には適しません。
暦年贈与(年間110万円ルール)
贈与税には年間110万円まで非課税になる枠があります(暦年贈与の基礎控除)。
これを利用し、毎年子ども1人につき110万円以内で教育費を贈与すれば税金がかかりません。
例えば毎年10年間贈与すれば合計1,100万円が非課税です。
継続的に資金を移すには手続き・管理が必要ですが、上限を小分けにできるので贈与税発生リスクを抑えられます。
学資保険や児童手当など
民間の学資保険やこども手当、奨学金など制度活用も検討します。
学資保険は積立金を教育費に充当でき、保障付きである点がメリットです。
ただし返戻率や手数料を比較検討し、長期的視点で有利不利を判断しましょう。
投資信託・NISAの活用
教育資金の運用先として、つみたてNISAやジュニアNISA(2023年末廃止済)など非課税投資制度も選択肢です。
長期投資で教育費を準備する場合、税制優遇措置を組み合わせれば資産形成の効率が高まります。


これらの方法を組み合わせることで、教育資金の準備は可能です。
重要なのは、税法に沿って用途を限定しながら計画的に贈与・積立を進めることです。
専門家(税理士・FP)に相談しつつ、家庭の資産状況や教育費の見通しに合った対策を講じましょう。
まとめ
教育資金贈与の非課税措置は、最大1,500万円まで教育費を非課税で贈与できるお得な制度でした。
しかし近年は利用件数が大幅に減少し、制度の公平性への批判も高まっています。
その結果、政府・与党は来年3月末での廃止を検討中です。
子どもや孫の将来の学費準備を検討している世代は、この制度廃止の影響を踏まえ、早めに代替策を講じることが重要です。
記事で紹介した直接支払い(扶養義務者からの学費贈与)や年間110万円贈与、貯蓄・投資などの方法を組み合わせ、教育費負担を賢く乗り切りましょう。
参考資料: 文部科学省・国税庁の制度概要資料、報道、国税庁タックスアンサーなど。これらの情報を基に、読者の皆様が安心して教育資金準備できるようサポートします。







