「ジュニアNISAが復活して、こどもNISAが始まるらしい」──そんなニュースを目にして、
- うちの子の教育資金づくりはどうすればいい?
- 新NISAやiDeCoとどう違うの?
と気になっている方も多いのではないでしょうか。
2023年末で新規受付が終了したジュニアNISAの後継として、2026年度から18歳未満も利用できる新しいNISA制度(通称:こども支援NISA/こどもNISA)をつくる構想が、金融庁とこども家庭庁の要望として動き始めています。
ただし、2025年12月時点ではまだ正式決定ではなく、税制改正の要望・提言段階である点には注意が必要です。
この記事では、ジュニアNISAと新NISAの違い、こども支援NISA構想の最新動向、iDeCoとの役割分担、子育て世代が今から準備しておきたいことを、金融庁など公的機関の情報を確認しながら分かりやすく解説します。


2025年時点の全体像 ─ ジュニアNISA終了から「こども支援NISA」構想まで
まずは、大きな流れをざっくり整理しましょう。
- 2023年末:ジュニアNISAの新規投資が終了
- 2024年1月:新しいNISA(新NISA)がスタート(対象は18歳以上のみ)
- 2024年以降:ジュニアNISA口座は新規買付不可だが、一定条件で非課税保有と払い出しが継続
- 2025年8月:金融庁が、つみたて投資枠の対象年齢を18歳未満にも広げる「こども支援」措置を税制改正要望として提出
- 2025年秋〜冬:自民党の資産運用立国関連の議連などからも、子どもNISA創設の提言が相次ぐ
この「つみたて投資枠の年齢制限を下げて、18歳未満でもNISAを使えるようにしよう」という案が、いわゆるこども支援NISA/こどもNISA構想です。
そもそもNISA・ジュニアNISAとは?基本の整理
NISAとは
NISA(ニーサ)は「少額投資非課税制度」の通称で、株や投資信託などの運用益にかかる税金が一定枠までゼロになる制度です。金融庁は、長期・積立・分散投資を通じて、家計の資産形成を後押しすることを目的としています。
新NISAとは
新NISA(2024年〜)は、
・つみたて投資枠:年間120万円まで
・成長投資枠:年間240万円まで
・合計:年間最大360万円、生涯非課税保有限度額1,800万円
・非課税期間:無期限
という形で、かなり使いやすくなりました。ただし対象は18歳以上の日本居住者で、未成年は利用できません。
ジュニアNISAとは
ジュニアNISAは、0〜19歳の未成年者名義で投資できる少額投資非課税制度でしたが、2023年末で新規の買付は終了し、現在は既に持っている人が条件付きで非課税のまま保有している状態です。
ジュニアNISAが伸びなかった理由 ─ 制度設計上の「使いにくさ」

ジュニアNISAがあまり普及しなかった背景として、次のような点が指摘されています。
1. 18歳まで原則引き出せない
教育資金は、中学・高校進学など途中でも必要になることが多いのに、「大学まで基本使えない」設計がネックになりました。
2. 非課税期間が最長5年と短い
長期でコツコツ積み立てる教育資金づくりには5年では物足りません。
3. 口座開設手続きが煩雑
未成年名義口座のため必要書類が多く、ネット証券に慣れていない世帯にはハードルが高く見えました。
こうした要因が重なり、ジュニアNISAは「使いにくい制度」という評価を受け、結果として利用が伸びなかったと考えられます。
こども支援NISA(こどもNISA)構想の最新動向
金融庁の税制改正要望では、つみたて投資枠の対象年齢引き下げを通じて、こども・若年層の資産形成支援や金融経済教育の強化を図る方針が示されています。自民党の議員連盟などからも、18歳未満を対象とする「こどもNISA」創設の提言が相次いでいます。
2025年12月時点で分かっているのは「要望・提言が正式に出ている」という段階であり、制度名や年間非課税枠、具体的なルール、開始時期などはまだ決まっていません。
したがって現時点では、「ほぼ確度は高まりつつあるが、条文ベースで確定しているわけではない」と理解しておくのが安全です。
新NISAとの違いと活用法
新NISAの概要
2024年から開始された新NISAは、従来のNISA制度を抜本的に見直し、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能な設計となっています。
- つみたて投資枠:年間120万円まで、積立投資に対応
- 成長投資枠:年間240万円まで、個別株や投資信託に投資可能
- 合計非課税枠:年間最大360万円、生涯で1,800万円まで
- 非課税期間:無期限
対象者は、その年の1月1日時点で18歳以上の日本居住者です。
未成年者は対象外であるため、教育資金目的で活用したい場合は、保護者の名義で資産形成を行う必要があります。
ジュニアNISAと新NISAの比較
ジュニアNISAと新NISAの主な違いは以下の通りです:
| 比較項目 | ジュニアNISA(旧) | 新NISA(2024〜) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 未成年 *0〜19歳 | 成人 *18歳以上、1/1時点 |
| 年間投資 上限額 | 80万円 | 最大360万円 *つみたて +成長 |
| 非課税期間 | 最長5年 | 無期限 |
| 払い出し制限 | 原則18歳まで不可 | いつでも可能 |
親の新NISAとの違いと、教育資金づくりの役割分担
こども支援NISAが実現した場合、教育資金づくりは大きく分けて次の3つの器を使える可能性があります。
- 親の新NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)
- こども支援NISA(つみたて投資枠の年齢制限撤廃分)
- 銀行預金・学資保険などの元本重視の商品
実務上は、
「必要な時期と金額がかなり確定している部分は預金・保険、
それ以外の『増やせたらラッキーな部分+子どもの将来のタネ銭』をNISAで」
といった分担が考えやすいでしょう。
iDeCoとの比較 ─ 教育資金か?老後資金か?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後資金づくりに特化した制度で、掛金が全額所得控除となり、運用益も非課税になる一方、原則60歳までお金を引き出せないという制約があります。
教育資金のように「高校〜大学で使う」資金をiDeCoで準備するのはルール上不可能なので、
- 教育資金 → 新NISA・こども支援NISA・預金など
- 老後資金 → iDeCo+新NISA
と、目的ごとに器を分けて考えることがポイントです。
ケース別シミュレーション ─ こども支援NISAが実現したらどれくらい増える?
イメージをつかむため、一般的なシミュレーション例を紹介します(いずれも将来の利回りを保証するものではありません)。
ケース1:10歳から毎月1万円、年5%で50年間運用した場合、元本600万円に対して約2,600万円超に増える試算例があります。
ケース2:0歳から18歳まで毎月2万円を年3%で積み立てると、元本432万円に対しておおよそ550〜600万円程度になるイメージです。
教育資金は使う時期がほぼ決まっているので、大学入学の3〜5年前からはリスクを抑えた商品にシフトするなど、出口戦略もセットで考えることが大切です。
2025〜2026年の今、親がしておきたい準備
こども支援NISAが2026年度にスタートするかどうかは、2025年末〜2026年初めにかけての税制改正の決定を待つ必要があります。しかし、制度が確定するまで手をこまねいている必要はありません。
1. 家計の「貯める力」を整える
毎月いくらまで投資に回せるか、固定費を見直すなど、土台づくりをする。
2. 親の新NISAを活用し始める
つみたて投資枠で長期・分散投資の習慣をつくる。
3. 制度の最新情報をウォッチする
金融庁の公式サイトや報道を定期的にチェックする。
4. 制度が決まったら、ルールを確認してから動く
対象年齢・年間枠・名義・贈与の扱いなどを確認し、既存のジュニアNISA・学資保険・預金との役割分担を再整理する。
まとめ
制度に振り回されず、「目的」から逆算する

どの制度にも共通して、元本割れのリスクや課税再開時の対応などの注意点があります。
特に非課税枠を超えると課税対象になるため、定期的なチェックと管理が求められます。
ジュニアNISAは、18歳まで引き出せない、制度が短命だったなどの理由で多くの家庭にとって使いにくい制度でした。その反省を踏まえて検討されているのが、つみたて投資枠の年齢制限を引き下げるこども支援NISA(こどもNISA)構想です。
ただし、どんなに制度が整っても、「わが家は、いつまでに、いくらぐらい、何のためにお金を用意したいのか」という目的が曖昧なままでは、最適な選択はできません。教育資金・老後資金・万一のときの備えの優先順位と目標額をざっくりでも言語化し、預金・保険・新NISA・こども支援NISA・iDeCoといった制度を目的に合わせて組み合わせていくことが大切です。
制度はこれからも変わり続けますが、「目的→手段」という順番さえ間違えなければ、制度変更にも柔軟に対応できます。こども支援NISAの正式決定を待ちながら、まずは家計の土台づくりと情報収集から、一歩ずつ進めていきましょう。
柔軟な制度選択と情報収集を
現時点では、代替として新NISAを活用した資産形成が現実的な選択肢です。
教育資金、老後資金など、それぞれの目的に応じて、新NISAやiDeCoなど複数の制度を組み合わせて活用し、無理のない計画を立てましょう。
また、制度変更が多い金融制度においては、情報収集と専門家のサポートを得ることも有効です。

主要出典(一次情報・公的機関ほか)
- 金融庁「NISAを知る:NISA特設ウェブサイト」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/index.html - 金融庁「NISA特設ウェブサイト」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/ - 金融庁「令和8(2026)年度 税制改正要望について」https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20250829/01.pdf
- 金融庁「NISAを利用する皆さまへ(NISA制度の概要)」https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf
- 国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」
https://www.ideco-koushiki.jp/ - 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「組織・事業の概要」
https://www.j-flec.go.jp/about/organization/ - TBS NEWS DIG「『子ども支援NISA』の創設など提言 自民『資産運用立国議連』」https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2301919?display=1
- 琉球新報「つみたて投資枠 対象年齢拡大を NISA、自民議連提言」https://ryukyushimpo.jp/news/economics/entry-4793778.html
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